【完全解析】エレン・イェーガーは悪だったのか?『進撃の巨人』が描いた「自由」という名の呪いと、2000年の残酷な歴史

最終更新:2026年2月|読了目安:20分(超長文)

⚠️ ネタバレ注意

この記事は作品の核心(マーレ編・地鳴らし)に触れています。
未読の方はブラウザバックし、今すぐ第1巻を読んでください。

その日、人類は思い出した。

「駆逐してやる。
この世から……一匹残らず!」

—— エレン・イェーガー

「自由」とは何か?

辞書を引けば「他からの束縛を受けず、自分の思うままに振る舞えること」とある。
しかし、諫山創が描いた『進撃の巨人』という怪物は、その定義を粉々に破壊した。

この物語は、少年漫画の皮を被った「哲学書」であり、人類が繰り返してきた「差別と戦争の歴史書」だ。
完結から時間が経った今でも、この作品が投げかけた「問い」は、棘のように俺たちの心臓に刺さったままだ。

今日は、単なる感想文ではない。
エレン・イェーガーという一人の少年が、なぜ「自由の奴隷」となり、世界を滅ぼさなければならなかったのか。
その残酷な真実を、徹底的に解剖する。

1. 「正義」と「悪」の反転構造

物語の序盤(1巻〜22巻)、構造はシンプルだった。
「人間(善)」を食べに来る「巨人(悪)」。
壁の中に閉じ込められた人類が、外の世界へ飛び出すための冒険譚。

俺たちは疑いもしなかった。
エレンは正義のヒーローで、巨人を倒せばハッピーエンドだと。

だが、世界はひっくり返る。

海の向こうにあったのは「自由」ではなかった

地下室の扉が開かれ、世界の真実が明かされた時、俺たちは絶望した。
壁の外にいたのは、自由な大地ではない。
「自分たち(エルディア人)を悪魔と呼び、絶滅させようとする他国(マーレ)」だったのだ。

ここから、『進撃の巨人』は「怪獣映画」から「戦争映画」へと変貌する。
壁の中の正義は、壁の外の悪だった。
ガビ(敵国の少女)から見れば、エレンこそが故郷を破壊し、友を殺した「悪魔」なのだ。

「被害者だと思っていたら、加害者だった」
この視点の転換こそが、諫山先生が仕掛けた最大の罠であり、現実の世界(戦争・紛争)そのものの写し鏡だ。

2. エレン・イェーガー:世界で一番不自由な少年

主人公エレンの行動原理は、最初から一貫して「自由」だ。
「俺は生まれた時から自由だ」と彼は叫ぶ。

だが、皮肉なことに、彼は「進撃の巨人」という能力(未来を見る力)を持ったことで、逆説的に「未来というシナリオ」に縛られることになる。

  • 彼は見てしまった: 自分が「地鳴らし」を発動し、人類の8割を虐殺する未来を。
  • 彼は抗おうとした: 「こんなことしたくない」と泣き、別の道(和解)を探した。
  • それでも運命は変わらなかった: 仲間を守るためには、自分が悪魔になり、世界を殺すしかなかった。

最終回付近のエレンの顔を見てほしい。
あれは「虐殺を楽しむ狂人」の顔ではない。
「決まってしまった未来を、淡々と執行する役人」の、死んだような目をしている。

彼は自由を求めて進み続けた結果、誰よりも不自由な「運命の奴隷」になった。
これが「進撃の巨人」というタイトルの真の意味だとしたら……あまりに救いがない。

3. 「地鳴らし」は肯定されるべきか?

エレンが行った「地鳴らし(世界の大地を踏み潰す虐殺)」について、読者の間では今でも議論が続いている。

肯定派: 「やらなきゃ自分たちが殺されていた。自衛のためには仕方ない」
否定派: 「どんな理由があろうと、罪のない子供まで踏み潰すのは間違っている」

どちらも正しい。だからこそ苦しい。
アルミン(対話派)の理想論だけでは、パラディ島は守れなかった。
フロック(過激派)の暴力論だけでは、憎しみの連鎖は止まらなかった。

諫山先生は、答えを出さない。
ただ、「世界は残酷だ。そして、とても美しい」という事実だけを突きつける。

俺たちがこのマンガから学ぶべきは、「どっちが正しかったか」ではない。
「立場の違う人間同士が、分かり合うことは不可能なのか?」という、絶望的な問いに対する思考を止めないことだ。

4. 伏線回収の芸術性:記憶の旅

重い話ばかりしたが、エンタメとしての完成度も異常だ。
特に「1話のタイトル(二千年後の君へ)」の意味が分かった瞬間の鳥肌。
「グリシャ(父)がなぜ始祖を奪ったのか」という真相(エレンが未来から父を脅していた)が明かされた時の衝撃。

すべてのコマ、すべてのセリフに意味がある。
読み返すたびに、「ここも繋がっていたのか!」と発見がある。

作者は最初から、この結末を決めていた。
俺たちは10年以上かけて、諫山創の手のひらで転がされ続けていたのだ。
その敗北感すら心地よい。

結論:これは漫画ではない。歴史だ。

『進撃の巨人』を「巨人が人を食べるグロ漫画」だと思って避けている人がいたら、俺は首を掴んででも読ませたい。
食わず嫌いをするには、あまりにもったいない。

ここには、政治、宗教、差別、歴史、哲学、愛、そして自由。
人間の営みのすべてが詰まっている。

最終回を読み終えた時、あなたは呆然とするだろう。
そして、きっとまた1巻から読み直したくなる。
その時、1巻のエレンの言葉は、最初とは全く違う意味を持って響くはずだ。

「心臓を捧げよ!」

世界中で社会現象を巻き起こした、21世紀最大の傑作。
全34巻。その衝撃の結末を、あなたの目で目撃してください。


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※一度読み始めたら、止まりません。寝不足覚悟でどうぞ。

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