【閲覧注意】頭蓋骨に穴を空けたら、世界はどう見える?『ホムンクルス』が暴く、人間の「心の奇形」と承認欲求の成れの果て

最終更新:2026年2月|読了目安:25分(精神汚染注意)

🧠 警告:この記事は「劇薬」です

本作『ホムンクルス』は、人間の深層心理をグロテスクに視覚化した作品です。
読了後、周囲の人間がバケモノに見える錯覚(フラッシュバック)に陥る可能性があります。
精神が不安定な方は、ブラウザバックを推奨します。

「ウィーン……ガガガガガッ……」

想像してほしい。
電動ドリルが自分の額に当たり、皮膚を突き破り、頭蓋骨を削り取る音を。
骨が砕ける振動が、脳髄に直接響く感覚を。

山本英夫による『ホムンクルス』は、ホームレスの主人公が70万円の報酬と引き換えに、「トレパネーション(頭蓋骨穿孔手術)」を受けるところから始まる。
目的は、脳圧を下げて血液循環を良くし、眠っている「第六感」を目覚めさせること。

そして手術後、彼は左目で見た世界に戦慄する。
そこには、人間はいなかった。
ロボット、砂、水、記号……。
人間の形をした「異形(ホムンクルス)」たちが、街を徘徊していたのだ。

1. ホムンクルス=「トラウマの具現化」

このマンガの最大の発明は、「人間の内面(コンプレックス)を視覚化したこと」だ。

例えば、ヤクザの組長。
主人公の目には、彼は「精巧なロボットの中に入っている、小さな子供」に見える。
一見強面で暴力的だが、その内実は「傷つくのを恐れて鎧を着込んだ、臆病なガキ」であることを、その姿が物語っている。

なぜ「砂の女」に見えるのか?

女子高生が「砂」に見えるエピソードがある。
彼女は記号化されたコギャルとして生き、確固たる自分を持たず、触れればサラサラと崩れてしまう。
それは、現代のSNS世代が抱える「希薄なアイデンティティ」そのものだ。

主人公は、彼らの「歪みの原因(トラウマ)」を探り当て、対話することで、彼らを元の「人間の姿」に戻していく。
それはまるで、悪魔祓い(エクソシズム)のような、あるいは荒療治のカウンセリングのような行為だ。

だが、他人の深層心理を覗くことには、代償が伴う。
覗いた自分もまた、その闇に侵食されていくのだ。

2. 誰が一番のバケモノか?

物語が進むにつれて、恐ろしい事実が浮かび上がる。
他人がバケモノに見える主人公・名越(なこし)。
では、鏡に映った自分は、一体どう見えているのか?

「無(のっぺらぼう)」だ。

彼はかつて、外資系金融のエリートで、高級車に乗り、美人の彼女もいた。
虚飾(見栄)で自分を塗り固め、整形手術で顔まで変えた。
その結果、彼は自分自身の中身を失い、空っぽの器になっていたのだ。

「他人がバケモノに見えるのは、お前自身が彼らをそう見下しているからだ」

この作品が突きつける刃は、鋭い。
私たちは日常で、他人を「肩書き」や「年収」や「容姿」というフィルター(色眼鏡)を通して見ていないか?
それは、相手を人間として見ていないのと同じだ。
つまり、私たちもまた、名越と同じように「心の穴」が開いたバケモノなのかもしれない。

3. 承認欲求という現代病の解剖

『ホムンクルス』が連載されたのは2000年代だが、そのテーマは現代のSNS社会でこそ強烈に響く。

「私を見て!」
「いいねが欲しい!」
「フォロワー数が私の価値だ!」

インスタグラムで加工された自撮り写真は、本作で言うところの「ホムンクルス」ではないのか?
現実の自分を直視できず、歪んだ理想像を投影して生きる私たち。
その姿を山本英夫に見せたら、どんな異形として描かれるだろうか。

「自分を見てほしい」という叫びは、「自分には価値がない」という絶望の裏返しだ。

主人公は、他人の歪みと交わることで、失った自分の顔(アイデンティティ)を取り戻そうともがく。
その結末が、救いなのか、破滅なのか。
ラストシーンの解釈は、読者自身の「心の歪み具合」によって変わるだろう。

結論:自分の中の「異形」と向き合う時間

このマンガを読むことは、決して楽しい体験ではない。
読んでいて気分が悪くなるし、自分の嫌な部分を突きつけられているようで、目を逸らしたくなる。

だが、だからこそ読む価値がある。
綺麗な言葉で飾られた自己啓発本では絶対に届かない、心の最深部にメスを入れてくれるからだ。

もしあなたが、
「周りの人間が全員敵に見える」
「自分が何をしたいのか分からない」
「虚勢を張って生きるのに疲れた」
そう感じているなら、今すぐこのマンガを読んでみてほしい。

頭蓋骨にドリルで穴を空ける必要はない。
ページを開けば、山本英夫があなたの脳をこじ開け、中身を暴き出してくれる。

「俺が……バケモノに見えるか?」

映画化もされたカルト的傑作。
人間のエゴと狂気を極限まで描いた、精神的ホラーの金字塔。


『ホムンクルス』で世界を反転させる >

※全15巻。一気読み推奨ですが、読後のSAN値(正気度)低下に注意してください。

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