最終更新:2026年2月|読了目安:12分(第一部・公安編)
本記事は『チェンソーマン』第一部(公安編)の結末を含みます。
マキマの正体を知りたくない方は、今すぐ引き返してください。
(でも、知ってから読んでも最高に面白いのがこの漫画です)
「みんな偉い夢持ってていいなァ!! じゃあ夢バトルしようぜ! 夢バトル!!」
藤本タツキによる『チェンソーマン』の主人公・デンジは叫ぶ。
彼の夢は「世界平和」でも「海賊王」でもない。
「食パンにジャムを塗って食う」「風呂に入る」「女の胸を揉む」。
ただそれだけだ。
これを「低俗だ」と笑えるだろうか?
親の借金を背負い、内臓を売り、泥水をすすって生きてきた彼にとって、それらは**「到達不可能なユートピア(理想郷)」**だったのだ。
この作品は、高尚な理想を掲げるヒーローへのアンチテーゼであり、**「今日を生き延びるだけで精一杯な現代人」**のための生存マニュアルである。
- ✔ マキマという名の「管理社会(システム)」の誘惑
- ✔ なぜデンジはマキマを「食べる」ことで愛を証明したのか?
- ✔ 「B級映画」のような展開に隠された、藤本タツキの計算
1. マキマ:「思考停止」させてくれる飼い主
公安対魔特異4課のリーダー、マキマ。
彼女はデンジを拾い、服を与え、食事を与え、仕事を与える。
まるで野良犬を飼うように。
「私の言うこと聞いてればいいの。そうすれば悪いようにはしない」
彼女の正体は「支配の悪魔」。
自分より格下とみなした者を支配し、意のままに操る能力を持つ。
ここで重要なのは、デンジが一時期、**「犬になりたい(思考放棄したい)」**と本気で願ったことだ。
自分で考えると、辛い思い出や将来の不安が襲ってくる。
だったら、美しくて強い飼い主に首輪をつけられ、言われるがままに生きたほうが楽ではないか?
これは現代社会の暗喩だ。
会社、国、インフルエンサー。
誰かの正解(マキマ)に従っていれば、責任を取らなくて済む。
しかし、その代償として「自由」と「自分」を奪われる。
マキマの恐ろしさは、暴力ではなく「甘美な隷属への誘い」にある。
2. デンジ:「バカ」という最強の武器
対するデンジは、教養がない。
漢字も読めないし、計算もできない。
だが、誰よりも「本質」を嗅ぎ分ける野生の勘がある。
敵(永遠の悪魔)が「精神攻撃」をしてきても、デンジは「寝てれば治る」と意に介さない。
複雑な理屈をこねる敵に対しては、「頭のネジをぶっ飛ばして」対抗する。
「頭が良くなると、不幸なことまで考えちまう」
このセリフは真理だ。
情報過多な現代において、いちいち全ての情報に反応していたら精神が持たない。
必要なのは、目の前の敵を切り裂くチェンソーと、目の前の飯を美味いと感じる鈍感力。
デンジの強さは、**「今、ここ」**だけに集中するマインドフルネスの極致なのだ。
3. ラストシーン:究極の「愛」と「食」
第一部のクライマックス。
不死身のマキマを倒すためにデンジが選んだ方法は、あまりに衝撃的だった。
「マキマさんを食べて、一つになりたい」
攻撃(殺意)は通じないが、愛(捕食)なら通じる。
彼はマキマをバラバラにし、生姜焼きにして完食した。
グロテスク? いや、これは生物としての究極の愛の形だ。
他の漫画なら「説得」や「封印」で終わるだろう。
だが、『チェンソーマン』は違う。
「支配」を終わらせるには、相手を自分の血肉に変えて(消化して)、対等になるしかない。
この**「倫理を超えたロジック」**こそが、藤本タツキ作品の中毒性だ。
4. よくある質問(FAQ)
- Q. ポチタの正体は何ですか?
- A. 「チェンソーの悪魔」であり、地獄のヒーロー。彼に食べられた悪魔は、その名前(概念)ごとこの世から消滅します。最強の能力です。
- Q. 映画ネタが多いと聞きましたが?
- A. 作者は無類の映画オタクです。『悪魔のいけにえ』『シャークネード』など、B級ホラーへのオマージュが大量に隠されています。「映画好きならニヤリとする」仕掛けが満載です。
- Q. 第二部は面白いですか?
- A. 第一部のアクション重視から、より内省的で不穏な青春群像劇へとシフトしています。「戦争の悪魔」や「飢餓」が登場し、世界観がさらに広がっています。
まとめ:エンジンを吹かせ。
『チェンソーマン』は、教科書通りの正解なんてクソ食らえだと教えてくれる。
誰かに飼われるな。
自分の欲望に忠実になれ。
そして、邪魔な奴がいたらエンジンを吹かしてぶった斬れ。
鬱屈した日常を破壊したいなら、この漫画を読むのが一番の特効薬だ。
読み終えた後、あなたはきっと、コンビニの食パンさえご馳走に見えるはずだ。
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